先日、「動物取扱責任者研修会」に参加してまいりました。
参加するために、短縮診察になってしまい皆様には大変ご迷惑をおかけいたしました。
この研修会は、動物取扱業(販売、保管、訓練等)を生業にする業者向けの研修会なのですが、年に1回行われます。内容としては、動物取扱に関する法規制の話や巷で騒がれている口蹄疫や高病原性インフルエンザ等の疾病に関する話題などです。研修会は3時間にわたって行われます。まぁ、研修会というよりは講習会で、講師の先生が話している内容をぼーっときいているだけの研修会です。
私は獣医師ですので、細かい法規制などの話は参考になりますが、それ以外の病気のことについてはすでに知っている内容でしたので少々退屈でした。
毎年、内容は違いますが同じことを繰り返しているので、少し面白みがない研修会です。(ぼそっ)
しかしながら、狂犬病の事について深刻な話題がありましたので、ここで紹介したいと思います。
犬を飼育されている方は狂犬病の中身のことはしらなくても、「狂犬病」という単語だけは知っているという方が多いと思います。ご存じない方もいるかとは思いますが、狂犬病は「狂犬病予防法」という法律があり、人獣共通感染症(ズーノーシス)として厚労省が管轄しています。
犬を飼う方で生後91日齢を過ぎた犬は狂犬病予防注射を打たなくてはいけません。また、本来は飼育日から30日以内に市町村長に届出を行い、登録する義務があります。それを怠ると狂犬病予防法違反として罰則(罰金等)されます。とはいっても、幼少期は狂犬病よりもまずは混合ワクチンを先に打つ必要がありますが・・・
ちなみに、人獣ともに狂犬病に感染し、発症して場合は100%死亡するという大変恐ろしいウイルス性の疾病です。幸いなことに、日本は島国という事もあり諸先輩方の努力のかいもあり、数十年前に狂犬病は本島からは駆逐されており、国内にはいないことになっております。
しかしながら、近隣諸国は狂犬病が撲滅されておらず、いつまた日本に入ってくるかわからない状態でもあります。全世界的にみて狂犬病がない国は日本を含め、ほんの数える程しかありません。
実は、この狂犬病の接種率が落ちているという話題がありました。我々の啓蒙活動不足のせいかもしれません。
この狂犬病予防注射は、万が一、国内に侵入されたときに、その感染の拡大を防ぐのに必要な大切なワクチンなのです。そして、その拡大防止につながる有効な接種率が70%は必要だといわれております。
しかしながら、近年の小型犬種ブームの影響か、この接種率が非常に下がっているとのことです。
各自治体に登録されている犬にて、毎年の狂犬病の接種率をみてみると約74%とまずまずな数値が出てくるとのことです。しかしながら、これらはあくまで登録された犬を対象にした統計でして、実際には未登録犬を含めた場合の接種率は約41%強にまで下がるということです。
これはかなり問題があります。一度、狂犬病が侵入した場合、いずれは撲滅はされるとは思いますが一時的に全国に拡散する可能性すら秘めております。
この狂犬病、犬にだけ感染するわけではなくアライグマ、キツネ、蝙蝠、猫など様々な動物に感染します。ここ北海道は野生動物の宝庫でもありますので、北海道で発生した場合はかなり厄介な事になる恐れがあります。
そして、お隣のロシアからの不法上陸犬の存在も実は非常に怖い事なのです。狂ったように見えるので狂犬病と言われていますが、見た目には狂っていない狂犬病症状もあります。その場合は、外見だけでは見分けがつかない事があります。
狂犬病注射は、毎年4/1~6/31までに打つように期間が定められております。勿論、それ以外の期間であっても狂犬病は接種可能です。我々は、なるべくならこの期間で接種してもらうよう調整をしてくださいと言われておりますが・・・。
ですので、「家の子は外に出さないから狂犬病は打たなくてもよい」というのは法律違反になって、処罰されることがありますので、狂犬病も必ず接種(登録も)するようにしてください。
不思議なことに狂犬病の接種率よりも混合ワクチンの接種率の方が高いとのことです。確かに、ジステンパー、パルボ、アデノウイルス感染症は怖い病気ですが、犬にしか罹りません。しかしながら、狂犬病は人獣共通感染症で、かつ、発症したら100%死亡するという非常に怖い病気ということだけは知っていただけたら幸いです。
ちなみに、体調が悪い場合などは猶予される場合もありますので、ご相談ください。