当院も開院してから2017年9月で8年目に突入しました。
それに伴い当院の医療機器も老朽化が進み、まだまだ現役で使えるものもあれば、当時は最新だったものが今では旧式となり、ちょっと厳しいものまで様々な感じです。
その為、今後、数年間にわけて医療機器の入れ替わりが行われます。
医療機器は性能が上がれば価格帯もそれに合わせて高くなる為、優先順位をつけての入れ替えになります。中には普及したことで逆に安価になってきた製品もありますが、まずは診断に必要な検査機器から逐次更新していきます。
今年は炭酸ガスレーザーの新規導入(2017年3月)と超音波診断装置(2017年10月)の入れ替えが行われました。
今回は、新たに導入された炭酸ガスレーザーについて紹介致します。
炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)とは、ガスレーザーの一種で、気体の二酸化炭素(炭酸ガス)を媒質に赤外線領域の連続波や高出力のパルス波を得るレーザー装置の事です。動物医療機器としては炭酸ガスレーザーとダイオードレーザーの2つのレーザー装置がありますが、どれを導入するか数年間悩みに悩んだ結果、最終的に導入したのが炭酸ガスレーザーです。
両方とも一長一短な感じで甲乙つけがたく、導入までにかなり時間を要してしまいました。予算が潤沢にあれば両方導入したほうがよいのですが、潤沢ではないのでどちらか1つの選択になりました。
炭酸ガスレーザーを選択した決め手は、ダイオードレーザーと比べ低価格(それでも乗用車1台買える金額)であった点と操作性が非常にフレキシブルで痒いところに手がとどくような操作性であった点です。特に口腔内など狭いところでの操作性が抜群でした。ダイオードレーザーによる疼痛緩和効果も魅力的でしたが、正直な話かなり個体差があったり出力不足だったり、何度かデモンストレーションで試しましたが何もしないよりは良い程度の違いしかなかったので、その機能を省いたら利点が炭酸ガスレーザーに軍配が上がった感じでした。他にもダイオードレーザーの利点は多々ありますが割愛します。
では、炭酸ガスレーザーはどのようなものに適応されるかを説明いたします。
1.皮膚科領域
体表腫瘍、疣贅、懸垂繊維腫、角化症などが適応になります。犬や猫もヒト同様に、皮脂腺腫や懸垂線維腫といった良性腫瘤の無麻酔下(針を刺すような痛みがあるので局所麻酔は使用)での切除に威力を発揮します。高齢の動物が増えてきている為、負担をかけずに素早く切除(蒸散)することができます。ただし、すべての皮膚腫瘤を蒸散できるわけではありません。
2.耳鼻咽喉科
口内炎・歯肉炎の治療、扁桃摘出、軟口蓋切除などが適応になります。口内炎や歯肉炎は犬や猫では非常に多く見られる疾患で、内科的管理ではやはり限界がありますので、その際はレーザーによる施術が適応になります。また、短頭種気道症候群の手術(鼻腔拡張術や軟口蓋過長切除)に対して絶大な威力を発揮します。ただし、これらの処置は皮膚に対する適応とは異なり全身麻酔下での施術が必要になります。
3.眼科・歯科・外科
眼科分野では異所性睫毛の治療、マイボーム腺腫の切除(姑息的な治療)が主な適応になります。歯科分野では歯肉腫瘤の切除や抜歯後の止血・殺菌消毒、歯周病治療などで活躍できます。外科領域では出血を抑えながらの腫瘤切除、腫瘤の蒸散といった手術補助として用います。
他にも色々と適応はあるとは思いますが、一番良く使っている分野はやはり皮膚腫瘤の蒸散でしょうか。大きさにもよりますが、局所麻酔が効いていれば数分のうちに施術は終了となります。外来診察にて対応が可能なので便利です。また、短頭種が多く来院される為、特に子犬であれば不妊手術や去勢手術の際に、予防処置(鼻腔が狭い場合のみ)として鼻腔拡張術や軟口蓋過長切除も合わせて行っています。