子宮蓄膿症はどのようにしてなるのでしょうか?

それには性周期が深く関係しています。

性成熟した雌犬には、通常、年に2回(約半年毎)の発情周期があります。

 そして、その発情周期は「発情前期」「発情期」「発情後期」「発情休止期」の4つに分けることができます。

発情前期とは、体内において卵胞刺激ホルモンが分泌され、その刺激で卵巣内の卵胞が発育し、排卵に備える時期です。そして、その卵胞からエストロゲンというホルモンが分泌され、その影響を受けて外陰部が腫れ、そして発情出血が始まります。この期間は概ね10日間ほどで、その間、発情出血が続きます。

発情期とは、排卵する準備が完了し、メスがオスを受け入れるようになる時期です。この頃になると発情前期でみられた発情出血の量は少なくなります。そして、卵巣の細胞の一部が黄体となり、黄体ホルモンという妊娠を維持するために必要なホルモンの分泌が始まります。このホルモンの働きによって子宮内膜が増殖し、受精卵が子宮に着床しやすい(つまり妊娠できる)環境が整えられるのです。

発情後期とは、排卵された卵子の受精能力が無くなる時期を云います。この期間は、卵巣内に形成された黄体の機能がどれだけ続くのかによって期間が異なります。黄体ホルモンは、発情期に妊娠しなくても長期にわたってその機能が維持されるため、発情期が終わった後に、巣作り行動や子育て行動、乳腺が腫れるなどの偽妊娠が起こることがあります。

そして、子宮蓄膿症は主に「発情期~発情後期」で発生してしまいます。

この時期は、精子が卵子に受精しやすくするために身体の免疫機能が低下します。また、子宮内で受精卵が着床・発育しやすいように環境も整われ、そして受精卵を守るために子宮の入口も閉じられます。この時期に大腸菌などの細菌が膣から子宮内に侵入してしまうと(増殖してしまうと)子宮内膜炎が起き、そして進行すると子宮蓄膿症に陥ります

免疫機能が関係していますので、免疫抑制剤などの薬物を使用している場合や内分泌疾患がある場合、高齢による免疫機能の低下が認められる場合には、感染のリスクが増加します。

発情期~発情後期にかけて、不衛生な状況であったりする場合は大変危険ですので、衛生的に保つことが必要になります。また、不適切な交配もリスクが高まります。しかしながら、どんなに気をつけていてもなってしまう場合がありますので、将来出産させる予定のない場合は、早期に不妊手術することをお勧めしております。

ちなみに中高齢だからといっても手術ができないわけではなく、勿論、若い時と比べるとリスクは高まりますが、しっかりとした術前検査およびモニタリングをすることで、そのリスクを減らすことはできます。ただし、様々な状況で手術が適応できない場合もあります。

次回は治療についてのお話です。

つづく