題名が何を云っているのかよく分からないと思いますので、専門用語がたくさんでてきますが、少し解説します。

角膜というのは本来は透明な組織であり、通常は血管も存在しません。

しかしながら、何らかの要因により角膜に血管新生(既存の血管から新たな血管枝が分岐して血管網を構築する生理的現象のこと)が起こります。

角膜に炎症(涙液減少や免疫疾患など)が起きていると、そこに向かって輪部と呼ばれる白目と黒目の境界領域から血管が伸びてきます。そこからさらに枝分かれしたりすると、まるで樹枝のような感じに見えます。

見た目が透明な角膜にぽつんと血腫が出てきているような感じに見えることから、便宜上「角膜血腫」とも呼んだりもしますが、正確な病名ではありません。なので、「角膜における血腫様血管新生」という症状名が正しいのかもしれません。

本病態に類似した病名として「輪部角膜炎」などがありますが、病態や原因、確固たる治療法は分かっていません。一応、調べてみましたが詳細は、分かりませんでした。

何分、角膜の血腫様血管新生が見られたとき、症状を呈している本人は全く無症状であり、不快感を示すことが殆どありません。その為、飼主様は全く気がついておらず、診察時における身体検査で判明したということが殆どです。そういう状況なので、角膜を切除しての病理組織検査を行うといった侵襲性が強い検査にはなかなか同意を得ることが難しく、確定診断が難しいというのが実情です。本病態に関して、何か最新の知見がないか調べてみましたが、見つけられませんでした。もっとよく探せばあるのかもしれません。

ちなみに、この症状の犬に遭遇する機会は比較的少ないのですが、今月に入って立て続けに3件も出会ってしまったので、ブログに書いてみました。

上の写真のように、細隙灯顕微鏡を使って検査するとわかりやすいのですが、動画から静止画にして切り抜いた画像だと少し不鮮明になってしまいます。(画像をクリックすると拡大します)

特徴として、血腫様血管新生が発生した部位の中心部の角膜表層部が白く混濁しており、角膜実質内は黄く変性していることが多いです。そして、この白色に混濁した部位を取り囲むように斑状に血管新生が起こっています。血管新生は角膜表層部よりも角膜実質下(角膜上皮という外側と角膜内皮という内側の間にある組織)に認められます。

角膜表面をこすって細胞を取ってきても、角膜上皮細胞や白血球が時々とれる位で細菌や真菌などといった原因になりうるような異常所見は確認できません。

この病態は明らかな発生機序がよく分かっていません(調べられませんでした)。角膜染色検査を行っても染色されずに、外傷が原因ということもないのです。

自然に治ることもありますが、概ねステロイド点眼で治療することが多く、体感的には無治療よりは点眼をした方が早く治っているような気がします。

治療に要する期間は概ね1~2ヶ月程度ですが、数ヶ月間の間、症状が続くこともあります。

ちなみに、若い犬ではあまり認められず、殆どのケースで中高齢のそれも小型(チワワ)~中型犬(柴犬、E・コッカー等)に発生しているため、加齢が原因の一つになっているのではないのではないかと推察されます。

何か最新の知見がみつかりましたら、またブログで取り上げたいと思います。