皮膚の「しこり(腫瘍)」についてのお話です。
犬の皮膚には良性のものから悪性のものまで様々な種類のしこり(以下、腫瘍)ができます。
通常は中高齢になってできる、または見つかるものが多いのですが、若年であっても腫瘍はできます。
そんな数ある皮膚腫瘍の中で突然出現し、そして、しばらくすると消えてしまうという腫瘍があります。
それは「犬の皮膚組織球腫」という腫瘍です。
この腫瘍は、比較的若年齢(4~5歳くらいまで)の犬で好発する良性の腫瘍です。しかし、中高齢の犬においても時々みかけることはあります。場所として顔や頭、耳、足先などにできることが多いです。
その見た目は、ピンク色したドーム状の単一性のイボです。通常、表面は脱毛しており、糜爛(びらん)または瘡蓋(かさぶた)を呈していることが多いです。綺麗なイボの時もあります。
このドーム状の腫瘍、実は悪性腫瘍である「肥満細胞腫」にも外見が似ているので見た目だけで判断してしまうのはかなり危険です。
細胞診を行ってしっかりと診断を下さなければなりません。勿論、確定診断を下すには外科的に腫瘍を切除し、病理検査に出すことが一番ではありますが・・・。
実はこの腫瘍、発生してから数日から数週間かけて徐々に大きくなり、そしてさらに1~2カ月ほどすると退縮して自然と消えてなくなるのです。
しかしながら、時折、退縮しないまま逆にどんどん大きくなっていくものもあります。また、大きくなったままでいつまでも退縮しないものもあります。
あまり大きくなると手術でとった場合の皮膚の欠損も大きくなるので、できるだけ早期に切除して、病理診断で腫瘍の種類(良性か悪性かなども)を確認するのがよいと思われます。
写真のわんちゃんは、じつは少し前に切除したばかりとのことだったのですが、同じ場所にまたできた(再発?別物?)ということでしたので今回、マージンをなるべく取りつつ切除しました。
幸い、「皮膚組織球腫」と診断がでましたし、完全に切除されているとのことでしたので、ひとまず安心です。
このように顔にできてしまった場合、皮膚のゆとりがない場所なので自然退縮を待つのも良いとは思いますが、拡大傾向であれば美容的な観点からも早期の切除が望ましいことは言うまでもありません。
腫瘍の種類や場所、本人の性格などにもよりますが、腫瘍が小さければ全身麻酔ではなく、局所麻酔での切除が可能な場合もあります。
皮膚にできる腫瘍は身体を触ることで発見できるものが多いので、日常的に身体をしっかりと触って確認してあげるとよいです。