手術や入院管理、日々の診察に追われてブログが更新できませんでした。
もしかしたら、5月~8月までの間は更新が月に2回程度になるかもしれません。
さて、世間は先日からG.Wに突入し、ここ札幌も快晴が続き非常に過ごしやすくなっております。G.Wやお盆、年末年始は獣医師になってからは無縁な存在なので、ほぼ他人事です。
その為、G.W中でも当院は定休日以外は平常通り診察をしております。
少し間隔が開いてしまいましたが、前回に引き続き「まぶたの出来物」についての続きです。
今回は、眼瞼部にできる腫瘍についてです。
犬の眼瞼には腫瘍がいくつか出現しますが、幸いにも眼瞼にできる腫瘤の殆どは低浸襲性であり、一般的な手術方法で摘出できます。また、眼にできる腫瘤から他臓器への遠隔転移については報告が上がっていません。
眼瞼部にできる腫瘍には良性と悪性とがありますが、3:1の割合で良性が悪性を凌駕しています。しかしながら、30%近くは悪性ですので単純な切除のみでは予後判定はできないということです。また、腫瘍細胞起源の話になりますが、間葉系よりも上皮系腫瘤である割合が1:5と圧倒的に上皮系腫瘍が多いという報告があります。
眼瞼部の腫瘍は10歳を超えた犬で発生することが多く、性差は関係ありません。
腫瘤が起きやすい場所ですが、上眼瞼部が約40%、下眼瞼部が約30%とその差はわずかです。
ビーグル、シベリアン・ハスキー、イングリッシュ・セッター、トイまたはミニチュア・プードル、ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバーといった犬種では眼瞼部の腫瘍の発生率が高くなります。
眼瞼部にできる腫瘍には、マイボーム腺腫or腺癌、メラノーマ(黒色腫)、線維腫or線維肉腫等があります。
治療は腫瘍の外科的切除か凍結手術、または両者を併用する方法が基本となります。一般的には外科的切除が日常的に行なわれています。
外科的切除方法と凍結手術とでは再発率が前者が15%、後者が11%とあまり有意差がないという報告があるのですが、その再発までの期間をみると外科的切除では28.3ヶ月、凍結手術では7.4ヶ月とかなり違いがあります。
外科的切除は腫瘍を含め正常と思われる周辺組織毎切除しますので、再発に要する時間が長くなるのは当然だとは思います。凍結手術は簡便ではありますが、液体窒素や特殊な器具が必要だったりするので低浸襲性な方法ではありますが、再発期間を考慮するとやはり外科的切除の方が良い気がしますね。
手術にはいくつかの方法がありますが、眼瞼幅(眼頭~眼尻)が25%以下の小さな腫瘤であれば「V字切開術」または「楔状切開術」を用います。それ以上だと眼の形が変わってしまうので、皮弁を用いた術式等で切除します。
高齢の為、麻酔が行なえない場合(大人しい性格な犬のみ)、姑息的な手段として腫瘤を潰して取る、または剪刀で表面のみを切除するという事もあります。この場合、出ている表面だけを取るだけなので、暫くすると腫瘤は再発します。
基本的に短期間で急激に拡大した腫瘤の場合は、腫瘤が悪性である場合を考慮しなければならないため、早めに切除するほうが望ましいです。