今回はフェレットのインスリノーマの治療についてです。
長くなってしまったので、内科的治療編と外科的治療編の2つに分けてお送りします。
インスリノーマはインスリンを生産・分泌する膵臓内のランゲルハンス島にあるβ細胞が腫瘍化したものです。
治療方法としては、内科的治療と外科的治療、外科的治療と内科的治療を組み合わせた治療の3パータンに分けることができます。
内科的治療とは、主に食事療法と薬物療法とがあり、これらは低血糖症状の改善・緩和が目的となります。
食事療法は、動物性蛋白質が主体の食事を頻回に与える方法です。その際、インスリンの分泌を促すような食事(糖分や高炭水化物)は避けるべきです。フェレットのおやつには糖分を多く含むものがいくつかありますので、注意が必要です。また、食事の中にビール酵母が入っていると必須アミノ酸や食物繊維が豊富なため血糖値の安定化につながるようです。食事の回数は可能な限り3~4時間毎(1日6回以上)に与えるのがベストです。
薬物療法には代表的な薬として、ステロイド(グルココルチコイド)とジアゾキシドという2つの薬を用います。
ステロイドの使用は、食事療法のみでは維持が難しい場合に用いられるインスリノーマ治療の第1選択薬です。
ステロイド(グルココルチコイド)は肝臓での糖新生を促進することで血糖値を上昇させます。また抹梢組織におけるグルコースの取り込みを阻害し、細胞単位でインスリンの作用に拮抗します。つまり、インスリンの作用を邪魔して、血糖値の底上げをする薬ということです。
ジアゾキシドは、ステロイドの投与量を増やしていっても症状の改善が見られない場合、長期間・高容量のステロイド投与のよる2次性の肝障害や副腎疾患など防止する目的使用する薬です。
ジアゾキシドとはベンゾサイアジアザイド利尿薬と呼ばれる薬で、インスリンの分泌を阻害し、肝臓での糖新生とグリコーゲン分解を刺激し、末梢組織での糖分の利用を阻害することで血糖値を上昇させる効果があります。しかしながら、国内では薬剤としては販売されていないので、海外から輸入して使うことになります。ですので、ステロイドと違って比較的高価な薬になります。
インスリノーマの内科的治療は、食事管理とステロイドによる薬物療法にて低血糖症状を起こしにくくさせることが主体となります。あくまで症状の改善・緩和が目的となりますが、それを「する」と「しない」とではQuality of Lifeに大きな差が生まれることになります。当然のことながら、発作などの低血糖症状を繰り返せばその分、寿命も短くなります。
年齢的な問題、または費用的な問題等から外科的治療が難しい場合、積極的な内科的治療を行うことをお勧めいたします。
まずは食事の頻回給与、これだけでも低血糖症状をかなり軽減させる効果があります。固形のドライフードを食べてくれない場合は、それを胡麻すりなどで細かく粉砕し、粉状にしたものを水やお湯でふやかし、お粥状にして与えてみてください。水分がすぐに乾燥してしまってカピカピになってしまうと食べませんが、水で再びふやかしてあげるとよく食べます。粉末にしたフードはタッパーなどに保管すれば、作り置きが可能です。
次回は、外科的治療についてです。