電子カルテの導入に伴うドタバタでブログの更新が遅れてしまいました。
カルテ入力は事前準備をしっかりと行っていたので問題ないのですが、動物保険の処理に慣れるまで少々時間がかかりそうです。

第1回は胆嚢という臓器の機能や役割に関して、第2回は胆泥症という動物独自の病気に関してを説明しました。

今回は、超音波検査にて「胆泥症/胆石症」と診断した実例のエコーと摘出後の胆嚢画像を踏まえて解説します。

まず1つ目は、最終的に「胆嚢粘液嚢腫」と診断した胆嚢のエコー画像と摘出した胆嚢の画像です。

下の画像は胆泥症と診断した初日の超音波検査画像です。健康診断の血液検査にて肝酵素の上昇が認められた為、確認しました。
血液検査上ではALPが若干高かっただけです。何も症状は伴っていません。その時は、食生活の改善と利胆剤の投薬にて定期チェックとしました。
画像所見としては、肝臓の大きさに対して胆嚢が大きく、胆嚢内に等〜高エコー源性(肝臓と比較し同じ色調かまたは白っぽいという表現)の何かが胆嚢の約8〜9割を占めています。この時点では胆泥症という仮診断です。胆嚢の内容物は非可動性です。体位を変えても殆ど変動がありません。

次の画像は、定期検査を実施していたある日(凡そ1年後)の超音波画像所見です。肝臓の矢状面と横断面の画像です。
症状が落ち着いていたため、毎月の検査ではなく2〜3カ月ごとに血液検査と超音波検査を実施していました。

1年前の画像と比べて変わっているところがあると思います。
まずは、最初の画像ですが、胆嚢の中に何か星形のような形状に変化しているのがわかりますでしょうか?そして、黒い領域が三角形上にいくつかあるのが見ると思います。
そして、下の画像はそのまま断面を90°プローブを回転させたときの画像です。
胆嚢と肝臓の境界線が白く、壁の周りが黒く、そして中央が白くなっているのがわかると思います。この状態は胆嚢壁にある上皮細胞からムチンがどんどん作られてできたゼリー状の領域であって、実は胆汁液ではないのです。わずかながら、胆汁液も混じっていますという感じです。

この時の血液検査は、ALTとALPが以前よりも上がっていましたが、軽度の上昇のみです。他は何も症状を伴っていません。

この画像は有名な画像でして、胆嚢内部がこのような星形に見えるときは、胆嚢粘液嚢腫と診断されます。当院にある画像でこれが一番きれいにだったので紹介していますが、教科書にのるような画像はもっときれいに星形です。
断面がキウイフルーツを切ったときの画像にみえるとも言われています。

似ているといえば似ていますすね・・・。
つまり、緑色の部分がゼリー化した黒い領域、白い部分が胆砂とムチンの混ざった領域という感じです。

胆嚢粘液嚢腫は手術適応の肝臓疾患ですので、この患者さんは手術にて胆嚢摘出を行うことになりました。
将来、こういう状態になった際は手術が必要である旨の説明を何度もしていたので、手術は早期に行われました。

当初は胆泥症と思われたものが、時間経過とともに静かに粘液嚢腫へと変化、悪化していったわかりやすい例です。
なんとなく怪しい変化はあったのですが、前回検査の時にはこのような典型的な画像所見ではなかったのです。

動画から静止画を切取ったのであまり画質が良くないですが、断面は残念ながらキウイフルーツではありません。
もずくや海苔の佃煮が押し固まった感じといった表現の方が正しいです。

胆嚢の真ん中にあるのは丸っこいやつですが胆石ではなく、まさにグミのような形と硬さの粘弾性物資です。

手術後の経過は良好ですが、同時に行った肝臓生検検査にて肝細胞変性や胆管・静脈の狭細化などが確認され軽度の門脈低形成という診断でした。

術後2年以上経過してますが、現在は副腎皮質機能亢進症が発症した為、ALPは高値を呈しています。
胆嚢摘出後の日常生活における不自由さや異常は見られません。

思いのほか、長くなってしまったので分割します。
次回は、胆石症と診断した症例と化膿性胆嚢炎と診断した症例を紹介します。

早めにUP予定です。

つづく