先週はかなり冷え込み、まるで冬に逆戻りしたような感じだった札幌もやっと一息つけそうな雰囲気です。

ただ、先週のようにいきなり吹雪くこともあるため、まだまだ除雪道具を片づけることができない状況です。

今回は、比較的よく見られる臍ヘルニアについてです。

臍ヘルニアとは、先天的に臍(へそ)の部分の腹壁が生まれてから完全に閉じなかった為、その孔(あな)から脂肪や大網(腹腔臓器を被っている脂肪を含む膜)、腸の一部が外側へ飛び出してしまった病態の事を云います。

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臍ヘルニア(俗に言う「出べそ」)には、指で押すと簡単にお腹の中にヘルニア内容物が戻る(帰納性)状態と、ヘルニア内容物が孔に癒着してしまった為に戻らない(非帰納性)状態の2つがあります。

ヘルニア孔が小さい場合は、特に無症状であることが多いのですが、孔が大きい場合、突出した内容物がどんどん大きくなっていく事があります。原因として、ヘルニア内容物が何らかの理由で激しい炎症を起こしてしまいヘルニア内容物、または周辺組織が腫れてしまった場合や腹腔からヘルニア嚢(ヘルニア内容物を被っている薄い膜)へ大網や消化管などの腹腔内容物が次々と入り込んでしまった場合などが考えられます。

万が一、腸管がヘルニア部分に入り込んでしまって、それが元に戻らなくなってしまったりすると、腸が閉塞を起こしてしまったり、血管が締め付けられてしまい(絞扼;こうやく)血流が滞ることでショックを引き起こしたり、腸が壊死してしまうこともあります。そして、炎症の為にヘルニア部分の皮膚が変色したり、熱感を持ったり、痛みを生じたり、食欲・元気がなくなってしまいます。

とは云うものの、臍ヘルニアの場合は1cm前後の孔であれば消化管が出てくることは稀なケースです。殆どの場合、ヘルニア内容物は大網の一部や脂肪であることが多いです。その代わり、鼠径部にできるヘルニアの場合は、消化管や子宮が入り込んでしまっているケースを多く診ます。それは解剖学的な臓器の配置に関わっている為です。

因みに、臍ヘルニアは仔犬(生後2ヶ月前後)の時に見られた場合は成長とともに改善する事がありますので半年程度は経過をみていくことが多いのですが、成犬の場合は外科的整復が必要となります。勿論、無症状である場合は、必須ではありません。

手術の基本は、ヘルニア内容物が戻せるものであれば腹腔内に戻し、孔を縫合して閉腹します。戻せない場合は、ヘルニア内容物をしっかり確認した上で、結紮して切断し、孔を閉じます。

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左の写真は、ヘルニア嚢を周辺組織から剥離し終えた所で、大きさが直径で6cmもありました。そして、右の写真は、ヘルニア孔の場所を特定するために癒着した結合組織を剥がして、孔の大きさと場所を確認している所です。

ヘルニア嚢を慎重に破って内容物を確認したところ、大きなヘルニアの正体は大網であることが判明しました。

この症例は数年前に帝王切開をしていて、しばらくしてから臍ヘルニアになっているのに気がつき、その後、徐々に大きくなっていったというものでした。そして、ヘルニア部分を痛がる事が何度かあり、今回手術をすることになったという症例でした。消化管が絡んでいなくて良かったです。術後の経過は良好で、ぽっこりでていたお腹も、今ではほっそりスマートになっております。