今回は子宮蓄膿症についてのお話です。
「不妊・去勢手術のメリット・デメリット」にて軽く触れましたが、未避妊雌に見られる婦人科疾患です。
子宮蓄膿症とは、膣から侵入した細菌(大腸菌など)が子宮へ達し、そこで増殖することで子宮内膜に炎症を起こし、結果として子宮内に膿が溜まってしまう病気(細菌感染症)のことを云います。この疾患は、主に中高齢の未避妊雌に発する疾患ですが、若齢でも認められることがあります。
これは子宮蓄膿症を呈している子宮の超音波画像写真です。黒いところが液体(膿)が溜まっている部位です。基本的に身体の中でこのように液体を貯留できる場所は、上腹部の胆嚢と下腹部の膀胱だけなので、子宮に妊娠もしていないのに大量の液体が溜まることは異常なのです。
症状としては、細菌感染による炎症反応で体温が上昇します(しない場合もあります)。そして、細菌の出す毒素によって起こる胃腸障害(嘔吐や下痢)や食欲不振、活力低下、さらに毒素(エンドトキシン)が腎臓の尿細管に対するADH(抗利尿ホルモン)というホルモンの働きを邪魔することで、多尿を引き起こします。結果として、身体の水分が喪失するので、それを補うために通常よりも多飲になります。つまり脱水するのでたくさん水を飲むということです。そして、子宮の入り口が閉じており、子宮内に膿がたまってしまった場合は子宮が膨らみますので腹囲が膨満します。
オリモノ(膿)が出ていればすぐに異常だと気付きますが、子宮の入り口が閉じていて膿が出てこない場合は、症状が進行して体調が悪くなってからはじめて異常に気づくことが多いのが現実です。
そして、症状がさらに悪化すれば、時として子宮が破裂して膿が腹腔内に飛散して重度の腹膜炎を起こしたり、細菌の毒素が体中に回って腎不全や多臓器不全、敗血症を引き起こして、最悪の場合は死に至ります。
つづく