札幌も先日まで冷え冷えしていましたが、ここにきて気温がぐっと上がって暑くなってまいりました。
草木の緑も大分増えてきて景色が綺麗になってやっと「春」という感じです。
そして、そんな草木の緑が生い茂はじめるこの季節になると現れ始めるのがマダニです。
マダニは8本脚からなる節足動物で、昆虫ではなくクモやサソリに近い生き物と言われています(昆虫は6本脚)。
一般家庭に住むダニ(イエダニやヒゼンダニなどの微小ダニ)とは違って固い外皮に覆われ、大きさは未吸血時で胡麻粒大の約3~4mm(フタトゲチマダニの場合)、微小ダニの8~10倍に相当します(微小ダニの大きさは約0.2~0.4mm)。マダニは吸血することでその身体が未吸血時の10倍くらいの大きさになる場合もあります。
日本に分するマダニのうち、フタトゲチマダニ、ヤマトマダニなどの約20種類が犬に寄生します。
マダニの唯一の栄養源は、動物の血液です。
幼ダニ・若ダニは発育・脱皮のため、成ダニは産卵のために吸血します。その吸血の際に、原虫やウイルス、リケッチア、細菌などの様々な病原体を運ぶベクター(媒介者)となることがありますので、マダニに刺されないようにする必要があります。
マダニは郊外の山や森、お散歩コースの公園や河川敷の草むらなどに潜んでおり、どこにでもいます。
マダニは、幼ダニ期から若ダニ期にかけて2度の脱皮をへて成長し、成ダニ期を迎えます。一生の中で吸血する期間は20~25日間ほどといわれ、他の期間は脱皮や産卵、動物へ寄生する機会を待ちながら自然環境のなかで生活しています。
血を吸って大きくなった雌のマダニは地上に落下して産卵をします。2~3週間の間に2000~3000個の卵を生みます。産卵後、3~4週間ほどで孵化をして幼ダニ(体長約1mm)となり、動物へ寄生します。数日間ほど吸血した後、地表に落下して脱皮します。若ダニ(体長約1.6mm)になったマダニは再び動物へ寄生し、数日間の吸血の後に、再び地上に落下し脱皮します。そして、成ダニ(体長3~4mm)になったマダニは草叢等に隠れて動物が現れるのをじっと待ちます。ハラー氏器官と呼ばれる独特の感覚器官をもっており、動物が発する熱や二酸化炭素、振動を素早く感知し、動物へダイブして寄生します。
飼主様がマダニの寄生に初めて気がつくのは、概ね成ダニが顔に寄生して吸血した時です。幼ダニのときは、気がつかないまま吸血され、いつの間にかいなくなってしまう事が多いので、よほど大量に寄生されない限りはなかなか気がつくのが難しいといえます。特に長毛種や毛色が黒い場合など。因みに、マダニは顔や耳、鼻、肛門周り、内股などの被毛が少ない所に寄生します。お散歩から帰ってきたらチェックしましょう。
マダニは、睡液に含まれる酵素で皮膚を溶かしながら、鋏角(きょうかく)と呼ばれる針状の構造物で皮膚を切開し、口下片(こうかへん)と呼ばれる突起物(針状の歯を持つ)を差し込んで吸血します。
口下片の鉤状の歯と鋏角により、マダニが皮膚状に固定され、吸血時に唾液とともに分泌されるセメント様物質が、マダニを皮膚により強く固定します。
この強固な固定によって、マダニは軽くつまんで引っ張ってもなかなか取ることができません。もし、マダニを強引に引っ張って取ってしまうとマダニの頭と胴体がちぎれて顎を含めた頭部が皮膚に残ってしまい、強い炎症反応を引き起こします。
ですので、もしマダニに寄生されてしまった場合は、無理やり取らずに病院までご来院ください。うまく取り除く方法があります。
また、お散歩コースにマダニがいることになりますので、安心して散歩していただく為にも、この時期はマダニの駆除剤をお勧めいたします。