前回からずいぶんと間が開いてしまいましたが、前回の最後に出てきたキーワード「デンタルバイオ」の続きです。
デンタルバイオは、共立製薬から販売されているサプリメントです。
主成分は口腔内善玉菌であるStreptococcus salivarius K12粉末とラクトフェリンです。
Streptococcus salivarius K12(S.サリバリウスK12)は、感染症と戦う能力を持っているプロバイオティクスです。
プロバイオティクスとは、わかりやすく云うと生物にとって良い影響をもたらす微生物、またはそれらを含む製品・食品のことです。
代表的な物で云えば、ピロリ菌の増殖を減らす効果があるLG21乳酸菌を含んだヨーグルトなどがあります。
S.サリバリウスK12は、口腔内微生物に分類されます。この微生物の特徴として2つの強力なタンパク質を生成することができます。
1つは静菌性ペプチド(Salivaricin A)、もう一つは殺菌性ペプチド(Salivaricin B)です。
こららのペプチドは、バクテリオシン様抑制物質(BLIS)と呼ばれています。
BLISは、Bacteriocin(バクテリオシン)-like(のような)Inhibitory(
因みに、バクテリオシンとは、細菌類が産生する主に同種や類縁種に対する抗菌活性をもったタンパク質やペプチドの総称のことです。
S.サリバリウスK12は、このBLISと呼ばれる抗微生物タンパク質を産生し、虫歯菌や歯周病菌に対する効果が認めれてます。
研究では、口腔内で定着することにより、Salivaricin AとSalivaricin Bが口臭の原因菌(悪玉菌)に対して攻撃的に働くことが分かっています。
デンタルバイオには、このS.サリバリウスK12を含んでいますので、口腔内の悪玉菌を抑制する効果があります。
つまり、悪臭や歯周病の原因菌に対して、従来は口腔内洗浄や抗生剤の投与などが必要でしたが、歯磨きが出来なくても、サプリメントを飲ませることで、それらの数を減らすことで口臭ケアが可能になります。ただし、全ての菌を減らすわけではないですし、口臭の原因が内臓疾患などの病気から発生しているものに関しては抑制はできません。あくまで、悪玉菌由来の悪臭の原因を抑制、歯石除去後の再沈着の抑制を目的とした商品と思って下さい。
ついでですが、ラクトフェリンも免疫調整作用や抗菌・抗ウイルス活性作用といった生体防御効果が期待できます。
では、なんでサプリメントを飲ませることで口臭が減るのか!
実は、この商品、飲ませて胃の中に入って消化管から吸収されて効果を示すものではありません。
食事に混ぜて、または単独で飲ませることで口の中にサプリメントが入ります。そして飲み込む迄の間に唾液(水分)と接触することでS.サリバリウスK12が活性化します。この反応を毎日継続することで徐々に、口腔内に善玉菌が増殖していきます。増殖することで上述したペプチドが増えて行き、悪玉菌が徐々に減ることで口臭が軽減するという流れになります。
その為、サプリメントを何かに包んで与えたりしてしまうと、ほぼほぼ効果はありません。
素錠のまま単独で投与、または錠剤を粉末にして食事に振りかけたり、歯茎に塗ったり、舐めさせて与えたりすることで能力を発揮します。
当院で取り扱いがある製品はPTP包装と呼ばれて病院でもらうシート状の薬のように1つ1つが分かれており、湿気に対しても強いです。
サプリメントなのでネット通販でも取り扱いがありますが、容器にそのまま100錠入っているタイプの製品が殆どなので開封後は湿気などの状況によっては痛んでしまう可能性があります。また、5kg以下の場合は、1日1錠の為、1瓶を消費するには100日かかってしまいますので、1ヶ月以内に使い切れる状況でない環境の場合は、あまりお勧めしません。
当院では1シート単位(10錠)での処方が可能になります。チキンフレーバーなので、嗜好性は結構良いです。たまに嫌がる個体もいますが、殆どの個体で許容してくれております。
ただし、このサプリメントには弱点があります。「継続しないと効果が持続しない」点です。
価格は、当院では1シート380円でご提供しております。小型犬で30日分の場合は、1ヶ月で1140円(税別)とそれほど高い価格ではありません。そして、何より副作用はありません。非常にまれに便秘になることがあります。ビオフェルミン飲んで便が少し硬くなるような感じです。
もちろん、歯磨きができる個体は、歯磨きも行った方がさらに効果が高まります。
この商品は、歯磨きができないけど、口臭が気になって仕方がない、歯石を取りたいけど、高齢であったり持病の影響で麻酔がかけられないといった方には是非とも試していただきたい商品です。
当院にかかられている方で、口臭が気になる方は、是非ともお声をかけてください。
最後に、この商品が出てからは当院ではリーバⅢやReDenta(リデンタ)を使用・推奨しなくなりました。
口にスプレーする(結構嫌がります)より飲ませた方が楽(食事混ぜたり、舐めさせるだけ)ですし、上記の製品はあまり科学的に根拠がないんで…何より値段も高い!!!
上記の製品を使っている方は、この製品への切り替えをお勧めします。合う合わないはありますので、合わない場合はやめればよいです。