雪も降り、いよいよ冬本番かと思いきや、まさかの2桁台の気温になったりと、相変わらず変な気候です。

外気が寒くなる秋頃から札幌はかなり冷え込むので、麻酔時等に使用している酸素ボンベがキンキンに冷えきってしまいます。そんな状態ですので外に酸素ボンベが設置してある関係上、室内配管を通っていても麻酔をかけて酸素を供給すると冷たい空気が体内に入る為、身体の芯から冷えきってしまい低体温の原因になってしまいます。

今年は昨年よりも温かいとはいえ、先月から酸素ボンベもすっかり冷えてきました。秋から春の間は室内設置型酸素ボンベにしていますが、室温も低いので結局、室内を温めていてもどうしても冷えてしまいます。

従来は手術室内をエアコンで温めたり、保温マットを敷いて身体を温めたり、点滴を温めたりして体温調整しておりましたが、真冬は直ぐに冷えてしまい、繰り返し温め直したり保温マットの温度を高くしたりしておりました。保温マットに関してはタオルなどでワンクッションおいていますが、低温やけどの原因になることがあり、あまり高く温度を上がられません。そんな訳で、周術期における体温維持・調整が最大の課題でした。

そこで登場するのが温風で体温管理が行えるウォーミングシステム「コクーン」です。

見た目は布団乾燥機、そしてやっていることも布団乾燥機…。ですが、温度調整が6段階にわたり可能であり、患者の体温の状況によりボタン1つで調整が可能な実に便利な機器です。

しかし、大きな欠点があります。

この機器は基本的に人医療向けに開発されていますので、純正品のブランケット(マット)が人用なのです。小児用のものを転用しますが、小動物医療では非常に使い勝手が悪く、しかもやたら高コストなのです。
1~3kgの小動物だと推奨されるサイズのブランケットを使っても全体的に温まらず、術者だけがサイドから出てくる温風に暖められてしまい、いったい誰の為の体温管理なのだろうかと思うくらいな有様です。
そして、基本的に使い切りなので再利用もできないという、なんとも環境的にもお財布的にも優しくないのです。

デモ機を借りたときにそんな状態だったので、購入をどうするかずっと悩んでいたのですが、日頃からお世話になっている道外の医療ディーラーさんに相談したら、海外製品で再利用可なマットがあるとの情報を得て、昨年の秋にマットと本体を同時に購入しました。マットは小型・中型・大型と3種類のサイズがあってとても重宝しております。洗えるので衛生的です。

純正品と比べて強度は申し分なく、マット全体的に温風が行き渡るので人よりも体温が高い小動物には最適な仕様となっておりました。

まぁ、純正品のブランケットをdisrespectするのは程々にしておきます。

この機器は周術期にはとても大切なもので、麻酔管理(特に冬場)が非常に楽になりました。体温の低下は代謝が落ちますので、麻酔からの覚醒等様々な影響を与えます。短時間の手術であれば、特に問題ありませんが、数時間かかる手術もある為、必須のアイテムと言えます。

北海道の冬は最高気温がマイナスになりますので、この時期の手術はいつも体温管理が大変でしたが、これのおかげで体温の低下が低く抑えられるので安心して手術ができております。

次回もちょっとした医療機器の紹介をしたいと思います。縁の下の力持ち的な機器です。